うそつき(たんぽぽ) 演出/ふじたあさや
この物語、川遊びの楽しさへのお誘いとして、じつに楽しくできている。それだけでなく、「うそ」と「ほんと」について、いろいろ考えさせてくれる、深い物語でもある。
大ちゃんは「うそつき」なのだそうさ。だれが考えてもありそうもないことを「あるよ」と言ったので、そう言われるようになった。
でも、だれが考えてもありそうもないことなんて、どうして決まったんだろう。教科書に書いてあったからか?先生がそう言ったからか?新聞に書いてあったか?新聞に書いてあってからか?ラジオやテレビで言っていたからか?ネットで検索したらそう書いてあったからか?どれにしても自分の目や耳で見たり聞いたりして、体験したことではない。大人の言葉で言えば「情報」である。とくにテレビや新聞雑誌のようなマスコミを通じて送られてくる「情報」は、間違いないと思われている。だからそれを利用して「うそ」の情報を流し、国民をだますことだってできるし、実際そういう時代もあった。今だってあるかもしれない。みんなが「うそ」を「ほんとう」だと思い込んでしまうと、「ほんとう」のことを言うのは勇気がいる。
大ちゃんはその「ほんとう」のことを言っただけでなく、自分の目で見、耳で聞き、体験することのすばらしさに、みんなを巻き込んでしまった。大ちゃんはすごい。大ちゃんは、誰かにみとめてもらおうなんて思ってないからそうなるのだろう。
ところで、お芝居は「うそ」である。だれも舞台の上で本当に人が死んだりするとは思っていない。死んだふりをしているだけだということを知っている。それでもその「うそ」を通して、「ほんとう」の心が、一人一人の観客の中に伝わるのである。上手に「うそ」をつく劇団は、「ほんとかな、ほんとかな」と思わせておいて「もしそうだったらどうする?」と観客に手渡すのである。お芝居は「うそつきごっこ」によく似ている。だから、劇団たんぽぽも「うそつき大ちゃん」ならぬ「うそつき(たんぽぽ)」なのである。
大ちゃんみたいに、みんなを巻き込めるかどうか、それはよくできた「うそつきごっこ」になっているかどうかに、かかっているのだろう。
〜まよいながら、より道しながら、
大切なものをみつけていく子どもたちの物語〜
トップページ 主な上演作品
原作/阿部夏丸 脚色/松下哲子
演出/ふじたあさや 音楽/遠山裕
美術/池田ともゆき 美術協力/阿部夏丸
音響/山北史郎 照明/坂本義美
振付/酒井麻也子 衣装/劇団衣装部
制作/上保節子
おはなし
大ちゃんはいつも一人。一人で寄り道(よりみち)ばかりしている。
大ちゃんはみんなから「うそつき大ちゃん」とよばれている。だって通称(つうしょう)「ドブ川」とよばれている家下川(やしたがわ)に魚がいるっていううんだ。それも60センチの鯉(こい)だって!しかもアユやウナギもいるんだって。さらに巨大(きょだい)ネズミも!!
…大ちゃんは何で「うそ」ばかりつくんだろう…。「うそつき大ちゃん」。寄り道ばかりの「うそつき大ちゃん」。
そんなある日、ぼくは大ちゃんと二人きりで、家下川の河原(かわら)を歩いた。そこでぼくは知った。家下川に60センチの鯉が本当にいるってことを。巨大ネズミの巣もあった!
大ちゃんが言ってたことは本当だったんだ!
…ぼくの心は痛んだ。だって大ちゃんは「うそつき」なんかじゃないんだから。
それからぼくは大ちゃんといっしょにいる時間が長くなった。いつもの景色(けしき)がぜんぜんちがう!大ちゃんといると新しい発見がいくつもあって、ぼくの心はワクワクした。
大ちゃんとぼくの冒険(ぼうけん)がはじまった!